Negotiationは交渉か?

英語の法律(契約)用語には私達が一般に使用する意味と異なる意味のものが多く出てきます。たとえば、negotiationです。一般には「交渉」「協議」などの意味を思い浮かべます。ところが、法律用語としてnegotiationが使われると、交渉や協議のほかに「流通」という意味で使われることがしばしばあります。「流通証券」と訳されるnegotiable instrumentは、それに裏書(endorsement)し、交付(delivery)することによって、あるいは単に交付することによって、証券の権利を他に移転(transfer)できる証券を指します。

少し難しくなりますが、negotiable instrumentについては、次の証券が流通性(negotiability)を有するときにこれらを総称して流通証券といいます。

① 商業証券(commercial paper)
金銭支払いを目的とする証券で、為替手形(draft)、約束手形(promissory note)、小切手(check)、預金証書(certificate of deposit)があります(主として企業が持参人払い方式で発行する短期の無担保約束手形のことを指しCPと称されています。UCC第3編に規定)。

② 権原証券(document of title)
物品の受取、所持、処分を表す証券で、船荷証券(bill of lading)、倉庫証券(warehouse receipt)があります(UCC第7編に規定)。

③ 投資証券(investment security)
投資目的で取得・保有される証券で、株式(stock)や社債(bond)があります(UCC第8編に規定)。

上記の証券でもその流通性が確保されていないと単なる紙片になりますので、これらの証券に流通性をもたすために、流通性の要件(つまり、流通証券であるための要件)が明確・厳格に規定されています。

この要件は、流通証券を発行するにあたり、当事者間の合意で放棄(waiver)することはできません。従って、要件を一部でも欠いている証券券面上に”This instrument is negotiable”という文言を加えてもそれは無利益の記載ですので、その記載から流通性が生じることはありません。英文契約書にも”Robert shall issue and deliver to JEX a promissory note which note shall be negotiable to pay US $10,000 as the sales price of the products on June 30, 2019.”などとよく記載されます。

negotiable、negotiation、negotiabilityなどの用語の意味を覚えておきましょう。
(執筆:通学担当講師)