「機密」と「秘密」

「機密」とは、広辞苑(岩波書店刊)や、大辞林(三省堂刊)などの国語辞典によると「主に政治・軍事上の重要な秘密をいう」言葉とされています。ところが実際には、ソフトウェアの契約書で民間企業の情報についても、たとえば「秘密保持契約」「秘密保護義務」「企業秘密」「会社の秘密情報」などと「秘密」を使っているケースと、「機密保持契約」「機密保護義務」「企業機密」「会社の機密情報」というように「機密」を使っているケースがあります。なぜソフトウェアの契約書で「機密」が使われるのでしょうか。それは防衛庁に関係する契約書の文言をそのまま流用したからだと言われています。このような経緯はありますが、ジェックスでは契約書において「機密」は国家の重要秘密に使い、それ以外には「秘密」を使うことを推奨しています。

この問題はさておいて、米国政府の場合、次のように定義される”classified information”が国家の「機密情報」に当たると考えられます。

Classified Information – Any information or material, regardless of its physical form or characteristics, that is owned by the United States Government, and determined pursuant to Executive Order 12356,April 2, 1982 or prior orders to require protection against unauthorized disclosure, and is so designated.
[The ‘Lectric Law Library’s Lexicon]

また、上記のExecutive Order 12356(行政命令第12356号)で、次のように機密等級が定められています。

Top Secret(機密)—その不正開示が国家安全保障に特に重大な(exceptionally grave)損害を及ぼすと合理的に予想される情報資料に適用される。
Secret(極秘)—その不正開示が国家安全保障に重大な(serious)損害を及ぼすと合理的に予想される情報資料に適用される。
Confidential(秘)—その不正開示が国家安全保障に損害を及ぼすと合理的に予想される情報資料に適用される。

上記の機密等級に添えた訳語は、次に紹介する防衛庁の用語を借用したものです。

防衛庁の秘密には、米国政府から供与されたミサイルや戦闘機など装備品の構造・性能に関する「防衛秘密」と、防衛庁の業務に関する「庁秘」があり、さらにそれぞれ漏洩された場合の損害の大きさの順に「機密」「極秘」「秘」に区分されています。

日本の企業では、文書管理規定に次の例のような秘密等級を設けているところもあります。

極秘 —重要事項で機密に属するもの
秘  —極秘に次ぐ機密に属するもの
社外秘—社外に漏らすことを禁ずるもの
親展 —社外に発する場合の機密文書

このほか、「極秘」「厳秘」「部外秘」「社外秘」とする例もあります。
「丸秘」「マル秘」というのもあります。一種の社内用語のようなものです。

最後に、インターネットセキュリティ関係の翻訳で実際に扱ったことがある秘密の表示例を紹介しますが、参考に添えた和訳は、その都度英文の文脈からつけた試訳であり、定訳ではありませんのでご注意ください。

Top Secret(極秘)
Secret(丸秘)
Sensitive(機密)
Confidential(丸秘、親展)
Restricted(限定開示)
ABC Personal Only(ABC社外秘)
For Your Eyes Only(貴社限定使用)

(執筆:西田利弘)